イオンが4月から始めた2980万円の格安スマホのサービスは今のところ絶好調のようです。

大手3社の通常の携帯サービスに比べると見劣りするところもあるようですが、通信速度をそれほど気にせず、安くスマホを利用したいという人にはぴったりのサービスかもしれません。

携帯サービスは、いろいろと複雑なので、その仕組みはある程度理解していおく必要があるかもしれませんね。








売り切れ続出の“イオン格安スマホ” 大手の半値
…どうして実現できたのか


3業態の役割分担

3業態の役割分担

イオン「格安スマホ」が快走

2014年4月4日、スーパー大手イオンが端末代と通信料金がセットで月額2980円という格安スマホの提供を開始した。

発売からわずか数日で入荷した在庫を売り切る店舗が続出するなど、販売も非常に好調なようだ。

大手携帯キャリアの月額料金は約6000円。

なぜ、携帯大手3キャリアの価格の約半値で提供することができるのか。秘密はMVNOと呼ばれる通信形態にある。

 
利用者にとってはイオンで買ったスマホも、携帯キャリアショップで買ったスマホも機種を除いては同じに見える。
しかし、実際はMNOと、MVNO、それを仲介するMVNEという3種類の事業者が存在している。現在の携帯電話業界は、これら3業態によって構成されている。

 
1)MNO(Mobile Network Operator)

 
総務省から無線周波数を割り当てられ、自前の無線設備を全て自前で提供する事業者。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3キャリアがこれに該当する。

最近ソフトバンクからイー・アクセスの株式を譲渡されたヤフーが、今年6月に発足させるワイモバイルもMNOだ。

2)MVNO(Mobile Virtual Network Operator)

 
MVNOとは、MNOの通信設備を利用する、あるいはMNOの通信設備との接続用の通信設備を保有する事業者。

 
(3)MVNE(Mobile Virtual Network Enabler)

 
MVNO事業を支援する事業者。

 
では、なぜこのような業態が登場したのだろうか。少し歴史を振り返ってみよう。MNOになるには、総務省から無線周波数を割り当てられる必要がある。

無線周波数は目には見えないが有限であり、国民全体の財産でもある。そのため、この無線周波数を割り当てられるためには、総務省から一定の条件が提示され、計画遂行能力がある事業者だと認定される必要がある。

例えば、3.9世代の無線周波数割り当ての際には、認定日から5年以内に、指定区域内カバー率が50%を超えること、といった条件が設定されていた。かつ、通信インフラは急病や犯罪遭遇時にも利用されるものであり、人命にも影響を与えるため、これらの設備を運用、保守する能力があることも求められる。

 
こういった条件を遂行するには、多額の費用や、人員、ノウハウも必要となり、異業種からの参入障壁がとても高い。
そのため一度MNO間での競争が止まると、サービス向上やイノベーションも停滞する危険がある。

 
MVNO、MVNEはなぜ誕生したのか

 
無線と言う有限リソースを使うことや、救急車等の緊急連絡の時にも「必ず電話が使える」品質を維持するという観点からMNOの参入障壁を下げるということは簡単には許可出来ない。かといってそのままではいずれ競争が停滞する。

 
MNOの増加以外の方法で、異業種からの携帯事業の参入障壁を低くし競争を活性化させることで通信業界をより発展させようという狙いから生まれたのが、MVNOだ。日本では、日本通信が2001年にMVNO第1号としてサービス提供を開始した。


とはいえ、MVNO事業を行おうと思っても簡単になれるものでもない。

MNOと比較すれば、MVNOになるのは確かに簡単だが、それでもMNOの無線設備と接続するための通信設備の一部を準備しなければならない。MNOほどではないが、MVNOとなるにも設備負担や無線通信に関するノウハウが必要になるのだ。

 
MVNOをやりたいけれども、無線通信のノウハウがないといった事業者がMVNOになるのをサポートする事業者がMVNEだ。MVNEの登場で、インターネットサービスプロバイダーなどがMVNO事業者としてサービス提供を行えるようになった。

 
このような経緯があり、モバイルを提供する事業者の顔ぶれが拡がり、多様なサービスメニューや価格競争によってMVNO市場が活性化することになった。

 
どうして安くなるのか

 
メーカーと卸売り業者の関係で例えると、わかりやすい。MNOはメーカーで、MVNOは無線周波数帯域を10Mbpsあたりでいくらといった「束」で買い取る、卸売り業者なのだ。

メーカーから卸してもらった帯域を、ユーザーに安く小分けする。MNOから10Mbps卸してもらい、それを1人100Kbpsで売れば、単純計算で100人の顧客を収容することができる。

 
高速な帯域を存分に使いたければMNO、使える帯域に制限はあるけれど安いほうがいいという人にはMVNOといったように、自分の利用方法に応じて料金プランを選べるようになった、ということだ。

 
しかし、MVNOが流行ってくるとメーカーであるMNOが、MVNOに対して利用料を値上げしてくるのではないかと疑問に思う人もいるかもしれない。
そこについては問題ない。

 
MVNOはモバイル市場の活性化を目的として生まれたため、MNOがMVNOに対して高額な回線利用料を請求しないように、総務省がガイドラインを定めている。このガイドラインにより、MVNOの回線利用料は定期的に見直されている。

MNOの設備が技術革新によって卸価格を引き下げられる状態になれば、値下げも行われる。2014年3月24日、NTTドコモはMVNO事業者向けに設定している携帯電話通信のパケット接続料金を最大56.6%値下げすると発表した。

 
賢く使うとお得

 
一般的に、MVNOが提供する「格安SIM」「格安スマホ」と呼ばれる商品は、通信速度制限や通信容量制限が行われている。

例えばイオンが月額2980円で提供するNexus4(本体機)+格安SIMでは、通信速度が200Kbpsに制限されている。NTTドコモのLTEが150Mbpsと謳っているのと比較すれば、750分の1の速度だ。安いのはいいけれど遅くて使い物にならないのではと、不安に思う人もいるかもしれない。

 
しかし実際には、文字中心のメールや、LINE程度を使うにはそれほど通信速度は必要ない。
私の主観だが、通信速度150Kbps~200Kbpsの格安SIMで各種アプリを利用した体感をまとめてみた。

動画や地図を見るとモタツキを感じることもあるが、LINE等のコミュニケーション用のアプリを利用するには不満を感じることはない。

動画などの高速通信が必要な場合には、WiFi環境で見ればいい。
移動中はスマホは連絡手段、動画等の娯楽は自宅のWiFiで楽しむ、というように上手に使い分けることができる人であれば、十分低価格のメリットを享受できる。

 
MVNO利用に落とし穴はないか

 
上手に使うと通信費を賢く節約出来るMVNOだが、いくつか注意する必要がある点をピックアップした。

 
通信速度制限

 
前述した通り、通信速度制限や月当たりで利用可能な通信容量制限が設定されていることがほとんどだ。利用方法によってはMNOを利用したほうが安くなるということもあり得る。

自分のスマホ利用方法を理解しておくといいだろう。

 
追加料金を払うことで通信速度制限を一時的に解除する「ターボモード」を選ぶと、地図などを利用する時だけ高速通信を行えるMVNOもある。

地図アプリによるナビゲーションをよく利用する人は「ターボモード」が有るMVNOを選択するといいだろう。

音声通話

 
MVNOの提供携帯によっては音声通話がサポートされていないものもある。

それでもLINEなどのIPネットワークを利用した無料の通話アプリを使うという手もあるが、音声で会話を楽しみたいという人は、回線交換方式の音声通話をサポートしているタイプのMVNOを選ぶといいだろう。

 
サポート

 
MVNOの場合には通信異常や通話トラブルが発生したとしても、基本的には「自己責任」となることも気をつけなければならない。

例えば、SIMは日本通信のb-mobileを利用し、端末は自分でSIMフリー端末を購入している場合、トラブル発生時には通信回線と端末で別々の場所に問い合わせる必要がある。
また、どちらが悪いのかを自分で調査する必要もある。

 
端末から回線まですべてを提供するMNOであれば、何か異常を感じた時に問い合わせる先は1つだけだった。頻繁に携帯キャリアに駆け込んでいた人には、MVNOは少しハードルが高いかもしれない。

 
賢く使って毎月3000円節約できれば、年間3万6000円の節約となる。消費税増税を契機に節約を考えている人には、一考の余地は十分にあるといえるだろう。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/140412/bsj1404121810001-n1.htm