飛び級制度はアメリカなどでは、それほど珍しいことではなく、優秀な学生は高校の過程を1年間で修了し、16歳で大学に進学するといったことは耳にすることがあります。

アメリカなどの場合はカリキュラムを前倒しで履修することができ、高校を卒業したうえで大学に進学することができます。

一方、日本では高校のカリキュラムを前倒しで履修するということができず、飛び級で大学に進学する場合、高校は中途退学になってしまいます。
これは大きなデメリットになります。
万が一、飛び級で進学した大学を中途退学するようなことになれば、最終学歴は中卒ということになってしまい99%以上が取得する高校卒業資格を取得できないことになります。

このことは日本の教育制度の不備といもいえると思いますが、横並び意識がきわめて強く、落ちこぼれを極力出さないという教育方針の日本では、優秀だからといってその生徒だけ先にカリキュラムを進めて卒業させるということに抵抗があるのかもしれません。

高校に通わないという選択をすれば、16歳以上が受験できる高等学校卒業程度認定試験(以前の大検ですね)に合格して、飛び級での大学進学をすることができますが、高校に通わずいきなり飛び級で大学というのも日本では極めて稀なケースだと思います。

日本での飛び級制度は、1997年に実施が認められ、1998年に千葉大学の工学部が開始しました。
千葉大学が開始した際には、ニュースにも取り上げられ話題にもなりましたが、その後はそれほど、この話を聞くことが少なくなったように思います。

千葉大学ではそれ以降72名もこの制度を使って入学を果たしています。
ちょっと驚きでした。

制度としては、それほどうまくいっていないと思っていましたが、意外に多いなという印象です。

それでも、制度開始から10年以上たっているにも関わらず、その他の大学を合わせてもわずか106名と、大学進学者から比べると極々僅かで、普及しているとは言い難い制度です。


中学や高校のカリキュラムを前倒しで修了することは、私立の有名進学校などでは当然のように行われているため、高校の課程を修了すれば、大学の受験資格が得られるといった形にすれば、もう少し普及すると思いますが、それはやらないようです。

中学はもちろん、高校も勉強だけでなく、社会的な適応への学びの場という位置付けがあり、高校を前倒しで修了するということに抵抗があるのかもしれません。

勉学優秀なエリートだけ、先に行くということに対する抵抗や違和感、もしくは嫉妬のようなものもあるかもしれません。

これらのことを考えると、横並び意識の強い日本で飛び級制度が普及しないのはある程度理解できると思います。

中流という概念が崩壊し、格差が固定化しつつあるといわれている日本ですが、大学への進学は基本的に平等であるべきという意識は根強いのでしょう。

その上、優秀な人がどんどん先にいって、結果を残していけば、あとから来る人はなかなか追いつけないといったこともあるでしょう。

一部の極めて優秀な人が社会構造を変えるような発見をすることができれば、社会全体の幸福につながる可能性もありますが、そこまでの大きな変革をするような人物が出ることは、めったにありません。
結局はその人自身が、成功を収めて終わるということになれば、格差の固定化ということにもつながりかねません。

もう少し日本でも飛び級制度が普及してもいいように思いますが、心理的な抵抗などもあってなかなか普及しないのかもしれませんね。





飛び入学:末は博士か…今年度6大学わずか4人 長短は…

毎日新聞 2014年04月07日 12時14分(最終更新 04月07日 12時50分)



高校卒業を待たずに大学へ入学する「飛び入学」。この春は、京都大学が2016年度から医学部に導入すると発表したほか、ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅選手(17)が日本体育大学に合格し、注目された。しかし14年度の入学者数(判明分)はわずか4人。

「飛び入学」にどんなメリット、デメリットがあるのか。【大槻英二】

 
大学への飛び入学は高校に2年以上在籍し、特定の分野で特に優れた資質を持つと認められた生徒が、卒業を待たずに大学に入学できる制度だ。

1997年、学校教育法施行規則の改正で数学と物理で認められ、2001年に全分野に広げられた。その分野の大学院が置かれている大学が対象だ。
98年度入試で千葉大工学部が募集したのを皮切りに、14年度入試では全国で6大学が行った。

 
高梨選手が受験した日本体育大体育学部の飛び入学入試は今回が初めてで、スポーツで特に優れた資質を持つことなどが出願要件。ソチ冬季五輪4位の実績を持つ高梨選手は書類審査を経て小論文と面接で選考され、3月上旬に合格した。競技との両立問題で、進学は保留中だ。

 
文部科学省によると、98〜13年度に飛び入学をしたのは106人。

このうち最多の72人を占めるのが国立大で唯一行っている千葉大だ。筆記試験や面接があり、物理や数学のコンクールでの実績も考慮される。

学務部の担当者は「専門的な勉強を早く始められ、若くして研究者の道に進める。一般学生より1年余裕がある分、留学もしやすい」とメリットを説明する。

先進科学センター長の橋本研也教授は「好きでたまらないことに取り組む学生は間違いなく伸びる。高校の先生や親の反対を押し切って飛び入学の道を選んだ学生たちだから、意見をはっきり言うタイプが多い」と話す。

 
同大では飛び入学した学生のうち、13年3月までに53人が卒業した。

大半が大学院に進学。大学も3年で早期卒業し、大学院へ飛び入学した卒業生も多い。これまでに10人が同大をはじめ東京大や京都大、米マサチューセッツ工科大などの博士号を取得。3人が大学教員になった。

 
一方、昭和女子大は14年度から飛び入学の募集をやめた。05年度に導入して以来、志願・合格者は08年度に1人いただけだったためだ。飛び入学すると高校は中退となる。
大学を途中で辞めると、最終学歴は中卒となるリスクがある。飛び入学が広がらない背景にはこの問題がある。

http://mainichi.jp/select/news/20140407k0000e040146000c.html